人間の体は体重の半分以上が水分です。
人類の遠い祖先、すなわち生命の誕生が水の中であったことと関係があるのです。
ところが体内の水分(主に細胞内にあり間質液・リンパ液といいます)は、
年齢が増えていくにつれて減っていき、赤ちゃんで水分は75%、
大人で60%、老人になると50%と明らかにみずみずしさが減っていきます。
夏場など暑くて汗をかいたり、スポーツで汗をかくような
「健康体で喉が渇く」という状態は、
全体水分量の3%が減少すると脱水状態になるので、
2%減少するとそれを体が知っていて水分の補給を要求しているのです。
しかし年齢とともに唾液分泌管が細くなって唾液が喉をうるおし難くなって、
喉の渇きを感じますが、全体に健康な体であっても水分をそれほど要求しなくなります。
特に高齢者の肌のたるみは細胞内の水分が減っていくことが原因です。
これは肌を構成するコラーゲンが減って、
肌に水分を貯めておく力が弱くなってしまうのです。
一方高齢者になると「熱中症」などのように、喉の渇きに気づかなくて、
意識不明になって救急車で運ばれケースも多くなります。
しかし汗もかかないのに喉が渇いてしまうのはアルコールの飲みすぎの他、
何らかの病気が潜んでいるのです。
これらには「肝臓が何らかの形で関わっている」場合が多いのです。
詳しくお話ししましょう。
肝臓は沈黙の臓器、肝機能が低下すると重大疾病が隠れていることも!
肝臓には次の3つの大きな機能があります。
★代謝(たいしゃ)
食べた物を体内の化学反応で必要な物質に変換し、エネルギーの出し入れを行うことで、
たとえば炭水化物を小腸でぶどう糖に分解した後、肝臓で各組織に吸収されやすい
グリコーゲンに変換します。
★解毒(げどく)と分解
体に取り込んだ悪影響を及ぼす化学物質や体内で作られる活性酸素などを体外に排出したり、有害物質を分解して無害化します。
お酒を飲むとアルコールは小腸で有害物質アセトアルデヒドになり、肝臓で分解無害化します。
★貯蔵
エネルギー源となるグリコーゲンを蓄えたり、ミネラル分を蓄え、必要な時に体内に放出します。
肝臓には痛みを感じる神経がないので、肝臓に負荷がかかっていても気付きません。
肝機能が極度に低下すると、体のだるさ・食欲不振さらにはひどくなって
黄疸(おうだん:皮膚全体が黄色味を帯びる)が出てきます。
またメタボリックシンドロームの体になると、肝臓に脂肪が蓄積される脂肪肝になり、
肝硬変から肝臓がんになることも多いのです。
肝臓が喉の渇きに関わっている事例
1)お酒(アルコール)の飲みすぎ
肝臓は解毒(げどく:毒を取り除く)作用を持った唯一の臓器です。
前述したように飲酒をすると小腸でアルコールを毒素となるアセトアルデヒドに分解して、肝臓で二酸化炭素と水に分解・無害化して腎臓から尿として排泄(アルコールの利尿作用)します。
このようなメカニズムでお酒を飲むと体内の水分が少なくなり、喉の渇きを覚えるのです。
2)肝臓疾患
前述のように肝機能が低下すると、あらゆる臓器に影響してきます。
腎臓機能も低下して尿の濃度をコントロールできなくなり、頻尿で量が増えることがあります。
このため、体内の水分が不足して喉が渇くのです。
3)糖尿病は肝機能低下と密接な関係
血液中の糖分濃度(血糖値といいます)が高くなる糖尿病になると喉が渇くのは、良く知られています。
これは血糖値を下げようと脳から水分補給の司令が出る、すなわち喉が渇くのです!
メタボリックシンドロームになると糖尿病と肝機能低下さらには肝臓病へと進む可能性が高く、スパイラル的に悪化していきます。
つまり膵臓(すいぞう)から出るインスリンが足りないと、血液中の糖が肝臓へ取り込まれ一時的に血糖値が下がります。
しかし肝機能が健全ならぶどう糖を様々な器官へ振り分けることができますが、肝機能が低下していると、分配できずに肝臓へ脂肪として取り込まれて脂肪肝になってしまいます。
このような状態では糖分が口から入ると喉が渇いた状態になってしまうのです。
まとめ
健康な人でも運動をしたり、暑い夏に汗をかいて喉が渇くのは良くあることですが、日中・就寝中でもひっきりなしに喉が渇くことがあれば、体に何らかの病状が隠されていることも考えられます。
ここでは肝臓疾患を含め肝臓に関係する喉が渇く現象を説明しました。