肝臓は人間が生きていくうえで非常に重要な役割を担う臓器であることはよく知られています。
その3大機能は代謝、解毒、胆汁生成であり、内一つでも機能障害を起こすと体全体の機能が連鎖的に悪化していき体調不良を引き起こします。
また、肝臓は寡黙な臓器と言われ、多くのケースでその機能不調や異変に気づくことができず、発覚した時点で重篤な疾病を発病してしまっていると言うことが厄介な点です。
肝臓は日々機能をまっとうするため組織破壊と再生を繰り返す臓器であり、組織破壊は食品やアルコールなど摂取過多、ストレス、運動不足、薬やサプリメントの常用、ウイルスなど様々なトリガーで行われますがその再生力も限度があります。
そして、一度慢性劣化化した組織が元の状態に戻るには多くの努力と時間を必要とします。
現代社会においては食の環境、会社や学校の環境など肝臓にとっては過酷な状況であり、普段の生活習慣に気を付けていても肝臓への負担は増えてきています。
また、生活習慣以外にもウイルス感染による肝臓の疾病も多く、定期的に肝臓の状態をチェックすることが大切なこととなっています。
ここでは肝臓にまつわる疾病とそれを事前に防止するための肝臓検査項目を整理しておきますので是非参考にいていただければと思います。
肝臓の疾病と症状
一方、生活習慣の影響が強いとされる肝炎は常用的な薬物やアルコール摂取によるものや、脂肪肝に代表されるような栄養過多、運動不足によるものがあります。
いづれにせよ肝炎を放置していると肝硬変、更には肝不全、肝臓がんと病状はひどくなり、命に係わる事態となるため、そうならない内に肝臓の状態を検査で把握しておくことが大切です。
重篤な肝臓の疾病である肝不全や肝臓がんは肝臓組織の炎症、つまり肝炎から始まり、炎症が悪化し慢性化すると肝臓組織が線維化(硬化)し、黄疸、腹水などの症状を伴う肝硬変へと進展していきます。
肝炎は急性と慢性があり、急性肝炎はウイルス(A、B、C型)や薬物など炎症の初期段階で悪化するものなのですが、症状に気づき難く結果的に長期放置され慢性肝炎となってしまう場合が多いのです。
ウイルス感染の肝炎は、食べ物や性行為、輸血など血液を通して感染するため生活習慣による肝炎とは原因が異なりますが、肝炎の原因としては最も多いのが現状のようです。
次の項目では検査の種類を整理しておきます。
自分でチェックできる肝臓検査
肝臓自体は痛みなどの症状が出難いですが、肝臓の機能低下を伴った一般的な症状の例を記載しておきます。
常に疲れているのが現代人の象徴と言われるほど皆さんは常日頃から肝臓に負担をかけています。
セルフチェックで実感できる症状の場合は肝機能もかなり悪化していることが多いため、少しでも気になることがあれば医者へ行って調べてもらうことを強くお勧めします。
疲れる、怠い
解毒作用、消化不良など肝臓に原因がある場合にでる症状です。
肝臓機能が低下すると血の質や巡りも悪くなるため足や手など末端に怠さなど症状がでる場合が多いです。
風邪を引いた症状が長く続く
ちょっとした発熱や腹痛、吐き気など風邪の症状がなかなか治らなかったりする場合は肝臓が原因の場合もあります。
食欲不振、お酒がおいしく感じない
風邪症状に近いですが、倦怠感に合わせて食欲不振がある場合、放置すると発熱や吐き気につながる場合は注意です。
爪、白目、顔が黄色っぽくなる。むくむ
黄疸の症状で有名ですが、そこまで症状が悪化しなくても日ごろからか鏡で色をチェックしましょう。
皮膚がカサカサしたり黒ずんできた場合も肝臓に関連する不調の場合がありますので注意してください。
赤い斑点ができる
上半身や、手のひらに赤い斑点ができる場合は血液関連の不振、ホルモンバランスの不振などで、肝臓に関連する場合があります。
早めに医者で検査してください。
アンモニア臭い
肝臓が弱り解毒機能がかなり劣化しているので尿質も変化しアンモニア臭を放つ場合です。
呼吸にも症状が出る場合はすぐに医者へ行きましょう。
お腹が張るなど
肝臓起因で酷い場合は腹水といって水がたまる場合があります。
医者での肝臓検査
機能検査肝臓の検査は、肝機能検査と臓器を可視化して観察する検査及び肝細胞検査に大きく分類されます。
一般的な検査は肝機能検査であり、これは年に一度の健康診断でも実施される血液検査で行われます。
血液検査で肝臓の機能に異常が確認されると臓器の観察、更に検査の必要な場合に肝細胞の検査と進めるのが一般的な流れです。
肝臓の機能に変化が起こると血液成分にも異変が起こります。
この血中成分の数値変にて肝機能が正常範囲であるかどうかの判断をする検査です。
非常に多くの成分指標が存在しますが、以下に代表的な成分を記載しておきます。
AST(GOT)
肝臓や心臓、腎臓、筋肉などの細胞に含まれる酵素で、肝炎など細胞の破壊の大小により血液中に流れ出る値が高くなります。
つまり臓器や筋肉の破壊や壊死の程度を数値化したものです。
一般的な基準値は40IU/L以下とされていますが、数値が高い場合は 肝障害以外に、心筋梗塞などの症状があります。
ALT(GPT)
GOTと同様の酵素ですが、心臓にはあまり含まれておらず主に肝炎、肝硬変など肝臓病の進行程度の指標となります。
基準値は30IU/L以下ですが検査施設によって多少異なりますがGOTに比べてGPT値が大きい場合に肝障害と考えられます。
AST/ALT比 (GOT/GPT比)
上記2指標の比ですが、肝硬変になると上昇することが多い数値です。
LDH(LD)
肝臓や心臓、腎臓、赤血球など様々な場所で作られる酵素で、肝細胞が破壊されると血中に流出し数値が上昇します。
基準値は 120~240 IU/L で上昇するとウイルス肝炎、アルコール性肝障害、肝硬変などの疑いがあります。
γ-GTP
アルコール性の肝臓障害の指標となっています。
肝臓をはじめ腎臓、膵臓の細胞の膜にある酵素で、この酵素はアルコールに敏感に反応します。
アルコール性肝臓障害や肝臓、胆道の異常などに著しく上昇する数値です。
基準値は男性で86以下、女性で48以下とされています。
ALP
体内のほとんどの臓器や骨に含まれている酵素です。
主に、肝臓を経て胆管や十二指腸に排出されるか骨を経て胆汁中に排出されますから肝臓や胆道系に異常があると胆汁の流れが悪くなり数値が上昇します。 354以下が基準値とされて、これを超えると必要により超音波検査やアイソサイム分析などが実施されます。
血清ビリルビン
ビリルビンは古い赤血球が破壊されるときに生成されるもので血中を移動し肝臓に運ばれ胆汁中に排出されます。
基準値は0.2~1.0㎎/dlで数値が上昇すると胆汁うっ滞、肝硬変、胆石症、胆道閉塞などの疑いがあります。
アルブミン
血中に含まれるたんぱく質です。肝細胞のみで生成され血中を通じ様々な物質を運ぶ役割をしています。
基準値は3.8~5.3 g/dLで肝機能の低下とともに数値は下がり、極端な場合は、肝がん、肝硬変、劇症肝炎の疑いがあります。
血小板
骨で作られ出血時に血を止める役割をしますが、肝機能が低下すると生成しにくくなります。
基準値は14万~34万/μとされており、血小板の数は、肝臓の線維化の程度と関連しています。
その数値からウイルス肝炎、肝がん、肝硬変の危険性の予測に使われています。
血中アンモニア
血中のアンモニアの量を指標化した数値です。
基準値は30~80μg/dlですが 肝臓の解毒機能が低下すると数値も増加します。
臓器の可視化と観察
切開せず肝臓の外観を可視化し、肝臓の状態を観察する検査ですから痛みはありませんが限界はあります。
超音波(エコー)検査
超音波をお腹に当てて臓器を可視化させるもので、健康診断でも行われる手軽な検査です。
超音波のエコーを画像化していますのでそれほど鮮明な可視化はできません。
CT/MRI検査
X線や磁気を照射し、肝臓を可視化する検査です。
超音波に比較して可視化の精度もよく、外観以外に数ミリ単位で断面観察も可能としたものですから精密な検査と言えます。
画像から肝臓の大きさや形、腫瘍の有無、線維化、血管の状態などの判断が行われます。
組織分析
この検査は実際に肝臓の組織を採取し、その検体を直接検査する方法となります。
肝生検
肝生検は2mm程度の針を肝臓に刺し、組織を採取し、その組織を顕微鏡などで観察する検査です。
麻酔を使用して組織を採取するため肝臓にもダメージが発生します。
検査自体は数分で済むのですが、検査後のケアなどを含め通常は病院に一泊することとなります。組織の炎症の程度、線維化の程度、壊死の程度など様々な進行状況の把握と治療方法の選択を目的としてますから肝硬変など明らかに症状が進行したケースに適用される検査です。
まとめ
以上肝臓の検査に関して整理しましたが如何でしたでしょうか。
誰しも肝臓に負担をかけているのが現代人の宿命と言え、栄養の偏りや不足、過食、飲酒、運動不足、肥満、ストレスなどに加えてウイルス感染など肝臓の機能低下の原因を挙げたらきりがありません。
いくら生活習慣に気を使っても肝臓の状態は自分では把握し難いものですし自覚症状が出る前に手を打ちたいものです。
最低でも1年に1度は血液検査などを行い、自分の肝臓の状態の把握をし、その結果を生活習慣に反映するのが賢い選択かと思います。